さて、ブログ2回目の記事にしては、かなり小難しい様で恐縮ですが、今回は「魚醤VS醤油」というテーマで、やや学問的なお話をさせて頂こうと思います。


■植物性タンパク質 VS 動物性タンパク質

醤油は植物性タンパク質を原料としているため、クセのないシャープな旨みがありますが、ボリュームやコクがたりません。
一方、魚醤は動物性タンパク質を原料としているため、甘さを伴った豊かなコクがありますが、シャープな旨みが不足しています。

おいしい味には、シャープな旨みと力強いコクの両方が必要なので、両者とも不足している味を補ってやることが大切です。
そこで、醤油ではかつおだしなどを併用して、おいしい味に仕上げています。
魚醤では昆布ダシなどを併用すると、味が整います。

また「鰹+昆布」がおいしいように「醤油+魚醤」も相性のいい組み合わせです。
一見ライバルに見える両者ですが、実は良きパートナーだったのです。


■アミノ酸VSペプチド

どちらかと言えば、醤油はアミノ酸が豊富で、しょっつるはペプチドが豊富です。
アミノ酸とペプチドは親戚のようなものですが、作用がかなり異なります。

アミノ酸は味をつける力が強いので、醤油は味つけに向いています。
一方、ペプチドは味を消す力(マスキング作用)が強いので、しょっつるは味消しに向いています。

バランスの良い味を作るには醤油としょっつるを使いこなして、単においしい味をつけるだけでなく、塩カドや生臭さなどの嫌な味を消すことが大切です。

例えば、イカやタイやフグなどの白身の魚の刺し身には、醤油よりもしょっつるが合います。
醤油ではこれらの上品で淡白な味が消されてしまいがちですが、しょっつるでは生臭さが和らいだ分だけ上品な甘さが引き立ち、淡白な味が消えることはありません。


■脱水VS保水

醤油は糖分やアルコールを含んでいるので、ものを引き締める力があります。
反対にしょっつるはペプチド作用により、ものをしっとりと軟らかくする力があります。

水っぽい魚や肉は醤油で調理すると、余分な水分が抜けてグッと締まった食感になります。
反対に、旨みたっぷりの魚や肉はしょっつるで調理すると、旨みを逃がさずふっくら軟らかに仕上がります。

例えば、焼き肉の下味つけには醤油よりもしょっつるが合います。醤油では焼いているうちに肉が硬くなってしまいますが、しょっつるならば肉は軟らかいままです。

お隣の韓国でも、焼き肉には必ず魚醤をふりかけてから焼くそうです。

使用例使用目的使用効果
ハンバーグ獣臭のマスキング、肉汁保水柔らかくジューシーに
カレーコク味の増強エスニック風の味付けコクのある、マイルドな味に
かまぼこ足成形強化、魚臭のマスキング柔らかく仕上がりドリップが出なくなる
餃子アンコの結着、ニンニクのマスキングニンニクの臭いが気にならず肉汁いっぱいに
おでんつゆこく味の増強醤油臭が低減しダシ味が引き立つ。
焼肉たれコク味の増強コクのある本場韓国風の味に
チャーハン隠し味クッキングフレバーが良くなる。
煮物隠し味風味豊な懐かしい味に仕上がる。


皆さんもぜひ、しょっつると醤油をウマく使い合わせて料理の味を引き立たせてください。